
9月18日はJimi Hendrixの命日です。
資料によれば、1970年9月18日 ロンドン、サマルカンド・ホテルにて昏睡状態になり、病院に運ばれる途中、死亡。死因は(急性)睡眠薬中毒による嘔吐物を喉に詰まらせことによる窒息死。ということになってます。それ以上の真相は知られておらず、あるいは憶測の域を出るものではなく、したがってもう誰にもわからないことになっています。
死因についてこれ以上の詮索をすることに意味はなく、詮索はファンとして不愉快である、との意見があり、基本的にはこれに同意します。
それでも少しだけ書いておきたいことがあります。
その日のJimiは、前日にワインを多量に飲んだ後に睡眠薬を医師の処方よりも大量に摂取していました。現在と違って、当時の睡眠薬は非常に危険な薬物であり、特にアルコールとの併用はある意味自殺行為であったことは事実です。しかし、処方を超えていたとはいえ睡眠薬の量は決して致死量に達していなかったこと、嘔吐物を詰まらせてから処置を受けるまでに不要に多くの時間を費やしてしまったことは確かのようです。つまり嘔吐物を詰まらせた時点から数十分程度の間に適切な医療処置を受けていれば、助かったことは間違いないであろうということです。
以上は、ハリー・シャビロンとシーザー・グレビークによるJimi Hendrixの伝記『エレクトリック・ジプシー』の記述を信頼するという前提での話です。
何故医療処置を受けるまでに、不要に多くの時間を費やしてしまったのかは憶測の域に属することなので書きません。
ただ、当時の、特にJazz Musicianの多くがそうであったように、ドラッグに体を冒され、言わば自業自得のようにして亡くなったのではなく、あくまで『不注意による事故』で亡くなったのだという事は明記したいと思います。Jimi Hendrixがドラッグ漬けで、救いようのないジャンキーであった、という類のよく見かける記述は間違いであるとほぼ断言できます。
亡くなる直前の彼は、ドラッグに溺れる自暴自棄の生活を送っていたわけではなく、それどころか、自らの新しい音楽のアイデアを実現すべく積極的に活動していたこと。ハードなスケジュールによって過度の疲労を背負い込んでいたことは事実としても、少なくともアーティストとして極めてポジティブな状況にあったことも明記しておきたいのです。これらのことは、オフィシャル・サイトに掲載されている、Jimiの最期のインタビューを読めば明らかであると思います。
ご存知のように彼はサクセス・ストーリーを進行中だったのであり、アーティストとして極めて恵まれた状況にあり、それだからこそ、36年前の不幸な事故は、今更のように、毎年のように悔やまれるのです。
彼が現実の音として遺したものは、その巨大な才能のほんの一部でしかないことを、私たちはみな知りすぎるほどによく知っているからです。