2006年08月12日

1975年.ベビーブーマー、ロック

まもなく終戦記念日がやってくる.そして戦後生まれの世代、日本で言えば『戦争を知らない子供たち』が第一線からリタイアする時期がやってくる.
日本においての『戦争を知らない子供たち』は、フォークソングの世代なのだが、欧米のベビーブーマーは、紛れもないロックの世代、というよりロックを生み出した世代だ。

ところで…

手元に1975年1月号の(New)Music Magazineがあるのだが、これは本の整理をしていてひょっこり出てきたものだ.定価が250円というのが時代を感じさせる.30年前の音楽誌を眺めるているうちに、当時のことが次々と鮮明に思い出される。

1975年1月号の特集は「オーティス・レディング」.その他の主要な記事を羅列してみると、「座談会・ロックの現状」、「ブルース・フェスティバル・リポート」、「ニューヨーク・ラテン入門(サルサの入門記事)」…という具合になる.
硬派のロック評論の代表格であったこの雑誌の特集で、ブラック系の話題が多いというところが当時のシーンをよく現している.
ところでこの中の「ロックの現状」という座談会なのだが、当時の編集長であった中村とうよう氏を中心に、湯川れいこ、福田一郎、石坂敬一といった面々が、「レイドバック」と「リラックス」というキーワードを巡ってロックの動向を語り合っている.当時を知らない人たちのために説明しておくと、この時代のロックは、音楽性の成熟を迎えると同時に、リラックスした緩めのサウンドがトレンドになりつつあった.この動きを代表するのが74年のベストセラーアルバムであった、エリック・クラプトンの“461 オーシャン・ブールバード”だったと思う.
座談会の内容の方なのだが、失礼ながら全くの無内容で退屈極まりないものとなっている.当時の音楽評論家たちはロックがどこへ向かうのか、ロックの“レイドバック”とは一体何を意味するのか、皆目見当もついていなかった、ということなのだと思う.
今にして思えば、この時期のリラックスへの反動として、パンク=ニューウェイブという新しい動きが立ち上がるのだが、75年の座談会の段階ではそんなことは知る由もない.

75年といえば、この私はちょうど、ローティーンからハイティーンの挟間の年頃であった.音楽にひたすら強い刺激を求める年頃であって、その時期に、おぼつかない自らのアイデンティティをロックという音楽で支えようとしていた自分にとって、目に見えてぬるま湯のように弛緩してゆくロックの有様は失望以外の何者でもなかった.
だから、新しいムーブメント=レイドバックからはなるべく目をそらし、ひたすらJimi Hendrixに代表される過去の伝説の方に向かおうとするのはとても自然なことだった.
一方で、この時期にはもう一つの大きなムーブメントがある.それはいうまでもなく(?)BLACK FUNKなのだ.
件のMusic Magazine誌75年1月号の広告を眺めていると目に付くのが、Hervie Huncockのキャッチコピー「ブラックファンクの極致」というもの.他にもサディスティック・ミカバンドの「黒船」なんてのもある.EW&Fが爆発の兆しを見せたのもこの頃ならJeff BeckがFUNK2部作でロックファンを悩殺したのもこの頃だ.BLACK FUNKが最も熱かった時期なのだ.
ひたすらのんびりとリラックスしてゆくEric ClaptonのROCKと、火がつくほど熱いJeff BeckのFUNK ROCKこのコントラストが少年の感性にどのように映ったかは説明する必要がないと思う.

話を最初に戻すが、ロックという音楽を産み出して育んだのは、間違いなくベビーブーマー達だ.この世代は、是非は別にして世界を大きく動かしてきた.というよりその圧倒的な数の多さゆえに、この世代が動くと世界も動いてしまうのだ.
そしてロックは、ベビーブーマーの子供たちへ確実に引き継がれてきた.ベビーブーマーの子供たちとは、概ね70年代生まれを中心とする世代、と定義して大きく間違いではないと思う.
しかし、ベビーブーマー世代とその子供たちの世代の間には、ぽっかりと挟間の世代が存在する.それが他でもこの私の世代であり、同世代を代表するアーティストがプリンスであって、そして、この世代を私は勝手にFUNKの世代と呼ぶことにする.
FUNKの世代にとって、ロックという音楽に対する感性は多様で微妙であるように思えてならない.愛憎が入り乱れるのだ.
それに比べて、ベビーブーマーとその子供たちのロックに対する愛情は、少しだけ皮肉って言わせていただくなら。あまりにも無垢であるように私の目には映る。

いずれにせよ、谷間の少数派=FUNKの世代とは比べ物にならない力(=数の力)を持ったベビーブーマー達が、仕事の第一線を離れ、第二の人生、余暇の人生(?)を迎えることで世界は大きく変わろうとしており、ミュージック・シーンもまた例外ではない.

posted by BustaCat at 19:20| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
過去の書物と思いがけず出会い、新たな発見や振り返ることは本当に楽しいですね。
私は現在35歳なので、ベビーブーマーの子供達の世代なのですね。
Jeff Beckのファンク2部作とは"Blow By Blow"と"Wired"のことでしょうか?
"Wired"収録の"Led Boots"は聴くたびに未だに鳥肌がたちます。
ところで、先日教えて頂きましたE,W&Fの"Gratitude"をようやく聴く事が出来ました。
この圧倒的なパワーは何なのでしょう!とても感動しました。
ディスコバンドというイメージがとても強かったので、本当に意外な感じもしましたが、演奏力、バンドの統制がここまで凄いとは、今まで知らずにいたことが悔やまれます。
教えて頂き、ありがとうございました!
Posted by PRINCE_CONTROL at 2006年09月07日 10:50
ご無沙汰です。
最近、自宅に仕事を持ち帰ることが多くて、なかなかネットに書き込みができません。
>Jeff Beckのファンク2部作とは"Blow By Blow"と"Wired"のことでしょうか?
仰る通りです。
当時音楽専門誌では、Jeff BeckがFunkアルバムを録音してるらしい、という噂が飛び交っていたのですが、私は、気まぐれJeff Beckのことだから「やっぱ、や〜めた」なんてことになるんじゃないかと思ってました。
それが、"Blow By Blow"がリリースされて聴いてみると、その「本気」ぶりには相当驚かされました。"Wired"にいたっては、もう驚くどころか開いた口が塞がらない、という状態でしたね。

"Gratitude"については、もう…このアルバムのせいで人生変わりました(笑
EW&Fが時代に押されてダンス化していくのは悲しかったもんです。でも、今聴くとダンスのEW&Fも、あれはあれでカッコいいんですけどね。ものすごく手間隙かけて丁寧に、ゴージャスにつくられてますから、当時の百円均一ダンス・ミュージックと一緒にすることはできないなって思います。
"Gratitude"の演奏はそうとう荒っぽいですけど、Wカップでアフリカのチームを観てるようなわくわくする楽しさがあります。身体能力抜群で組織力もあるんだけど、一瞬のミスで結局ヨーロッパのチームに負けちゃうようなアフリカチーム。

後日のEW&Fのライブは、完成度高まるし、音楽性も高まるんだけど、なんか「ショー」として「でき過ぎ」を感じてしまって今ひとつなんですね。だから僕らの世代のEW&Fファンにはやっぱり"Gratitude"っていう人が多いみたいです。
Posted by BustaCat at 2006年09月08日 02:53
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