2006年10月22日

1978年

 いろいろ考えた末(本当は単なる思い付き)でPrinceの初期アルバムをまとめてレビューしようと思い立った・・・が、まだ、書いてない。それで、その書き出しは「Princeには『異端児』というイメージが付きまとうが、そのデビュー時には、異端どころか時代のど真ん中に位置する、しかも優等生だった・・・」ってな感じにしようと思っていた。

 Princeのデビューは1978年。というわけでこの1978年という年を、いい加減な記憶で書くだけではなくて、ちょっとだけ実証的に(←そんな大げさなもんではない)調べてみようと思いたった。
 調べる方法は実に安直で簡単。Grammy Awardsの記録を見てみる・・・というだけ。もちろんグラミーだけで音楽シーンがわかるわけではないが、少なくとも時代のメイン・ストリームはなんとなくつかめる・・・ハズだ。

 グラミーは2月に発表になるので、78年を反映しているのは、
79年の結果ということになる。
 これを見ると78年というのはもう『ダンス』一色。"Saturday Night Fever"で塗りつぶされているという感じ。Bee Gees...その他いろいろ大勢...Yvonne Elliman, K.C. and the Sunshine Bandなんて名前も懐かしくはあるのだが、自分にとっては音楽の暗黒時代である。この2年前にStevie Wonderの"Key Of Life"があるわけだから、その後の脱力感の大きさを想像して欲しい。別に「ダンス・ミュージック」が悪いというわけではない。イヤだったのは、一色で塗りつぶされてしまうということ。当時を知っている年代の人には結構共感してもらえると思う。

それでそのときのR&B部門は以下の通り
■Best R&B Vocal Performance, Female
Donna Summer for "Last Dance"
■Best R&B Vocal Performance, Male
George Benson for "On Broadway"
■Best R&B Vocal Performance by a Duo, Group or Chorus
Earth, Wind & Fire for All 'n All
■Best R&B Instrumental Performance
Earth, Wind & Fire for "Runnin' "
■Best Rhythm & Blues Song
Paul Jabara (songwriter) for "Last Dance" performed by Donna Summer
といった具合。かいつまんでいうならEW&Fはこの時代の救いであった。実際、この時のEW&Fは、おそらく絶頂期であったと思われ、FUNKという音楽がここまでPOPな音楽の高みへ登りつめることができるという証になっていたと思う。その絶頂期が『ダンス』の絶頂期と重なってしまったことが、EW&Fの最大の不幸だったかもしれない。

これが翌年80年のR&B部門になると
■Best R&B Vocal Performance by a Duo, Group or Chorus
Earth, Wind & Fire for "After the Love Has Gone"
■Best R&B Instrumental Performance
Earth, Wind & Fire for "Boogie Wonderland"
と、EW&Fは相変わらず強いのだが、その『内容』がまるで違う。大きく転向してしまっている。78年リリースの『太陽神』All'n Allが大きな節目だった。
その「転向」の質は79年Best R&B Instrumental Performance 受賞の"Runnin'"と80年の"Boogie Wonderland"の差に如実に現れている。

 ごく個人的に言ってしまうなら・・・"Boogie Wonderland"で『ダンス』に堕ちたEW&Fを、まだ10代だった私はとても許せなかった。これは悲しかった。痛かった。



 ところでグラミー賞には当時からいろいろな部門があったのだが、今回偶然気がついたのは、ROCK部門の登場が80年だということ(意外に遅い?)。これが何を意味するかと言えば、ROCKがこの頃初めてミュージック・シーンの中で「市民権」を得た、ということではないだろうか。

 典型的なのがDoobieで、その初期にはアメリカン・ロックを象徴するかのような、バリバリにノリのいいギターバンドだった"Doobie Brothers"は、この頃には、マイケル・マクドナルドのVo/KBを中心にした、都会的に洗練されたROCKの代表格として"Doobies"に変身していた。この頃のROCKは音楽的に十分に成熟しており、その支持層も大人になって、つまりAORの時代になったということ(前兆はECのオーシャン・ブールバードの「レイド・バック」あたりから漂っていたのだけれどね)。

 Jimiの時代を愛する(そしてJimiの時代に遅れてやってきた)当時の若いロックファン(つまり私たち)にとってのAORは、絶対にROCKとは認めがたいものであった。決して嫌いだったわけではない、ただ何か重要なモノが欠落していたせいで、それはROCKというよりはPOPの類のものだった。言う人に言わせればROCKは、このあたりでいったん「死んだ」のだ。もちろん次のウェイブが水面下で始まってはいたのだが。

 いずれにせよ。Princeは、かなりややこしい時代にデビューを飾ることになった。そしてこの時代のややこしさとPrince自身の音楽のややこしさは、とても無関係とは思われない。端的に言ってミュージック・シーンはかなり乾いていた。その渇きを癒すには、砂漠に洪水を起こすほどの水が必要だった・・・なんてまた大げさなことを書いてしまう。
posted by BustaCat at 00:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
投稿は久しぶりですが、いつも楽しく拝見させてもらってます。

個人的には78年は、いわゆる大御所のロックと距離がでてきた頃です。

ボブ・マーレー、クラフト・ワーク、ケイト・ブッシュをよく聴きていましたが、一番好きだったのが、アースでしたね。

でも、beatlesのカヴァーgot to get〜に結構ガクッ!ときました!

分岐点は長岡秀星という説は、どう思われますか(笑)

最近、私もブログを始めてみましたので、よろしかったら、遊びに来てください。
http://blog.so-net.ne.jp/lp72-cd93/
Posted by bay58 at 2006年10月26日 13:45
bay58さん。どうもです。

Got To Get You Into My Lifeをはじめて聴いたときには
「これは違うだろー」と思いましたよ。私も。
でも、今になって聴くとあれはあれでなかなかよくできてるんですね。

分岐点は長岡秀星というのは一理あるかもしれません(笑
「イメージのスケールがデカくなり過ぎ〜」という感じで。

BLOG拝見しました。濃い〜ですね。
また遊びに行きます。
Posted by BustaCat at 2006年10月27日 02:08
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