2006年10月20日

Scritti Politti あるいはアリフ・マーディン

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Music Magagine10月号の特集が"Scritti Politti"だった。これは、今年8月の彼らの初来日を受けてのもの。
以前にも記事を書いたことがあるのだが、"Scritti Politti"は80年代の大事件だった。事件性(笑)ということでいえば、Princeをも上回っていたかもしれない。それくらいに当時としては、斬新で衝撃的なサウンドだったのだ。
MM最新号の紙面でも取り上げられているが、中村とうようさんは10点満点の絶賛だったし、ピーター・バラカン氏も大プッシュしていたのを覚えている。マイルスが"Perfect Way"をカバーし、さらに『Provision』に客演したあたりで評価はゆるぎないものになったと思う。
私はと言えば、初期の17インチシングル3枚("Wood Beez", "Absolute","Hyonotyze")を全部買い集めて擦り切れるまで聴いていた。歌詞の中で哲学者ジャック・デリダの名を挙げるなんていう洒落も、当時としてはカッコよすぎだった。さらには、浅田彰がその著作『構造と力』の中で"Scritti Politti"を採りあげるなどというのも輪をかけてカッコよく感じてしまったものだった。

今年"Scritti Politti"名義で7年ぶりのニューアルバムをリリースしたのは知っていたが、試聴しただけで結局買わなかった・・・
いつの間にかシーンから消えてしまったようで、どちらかというと派手な「花火」のような印象があったのだが、今でも活動しているということに少しだけ驚きはあった。

"Scritti Politti"のサウンドを乱暴に言ってしまうなら「クール」で「ハイテク」で「ポップ」なホワイト・ファンクとでもいうことになる。ハイテクといってもあくまであの当時のレベルでのハイテクだけどね。
今更のように聴きかえしてみても、UK-POPな上半身にFUNKな下半身という構成は、過度にキラキラした80年代特有の派手過ぎサウンドを聞き流すならば十分聴くに耐える。80年代打ち込みビートとは言え、アベレージ・ホワイトバンドのスティーブ・フェローンのドラムや、17インチシングルでのウィル・リーのベースは、しなやかなグルーブを絡ませていて、これは今でも気持ちいい。いや今だからこそ気持ちいいのかもしれない。
POPでキュートな上半身にFUNKな下半身をブレンドする、というやり方は、今に至るまでもPOPのひとつの王道と言ってもいいのではないだろうか。
あるいは、ちょっと臍を曲げて言えば、軽薄かつ不毛で無内容に浮遊する80年代の華だったかもしれない。
例えば、当時の流行モノの代表だった、デュラン・デュランやパワー・ステーションに比べるなら、はるかに緻密でゴージャスな音造りで、音造りの手法と言うことで言えば、当時まだ未熟だったHIP-HOPを既にして商品化してしまっていた。また当時大ヒットしたシャカ・カーンの"Feel For You"とはピッタリ重なる「絶妙なPOPのさじ加減」だったと思う。これはほぼ同時期のアリフ・マーディンの仕事ということで当然なのだが・・・

今になって、あの斬新で衝撃的なサウンドを仕込んだのは、アーティスト:"Scritti Politti"自身なのか、プロデューサー:アリフ・マーディンなのか、と考えてみたとき、どうも後者であるような気がしてならない。

アリフ・マーディンは今年の6月に亡くなった。

60年代のアレサ・フランクリンにはじまり、ベット・ミドラー、ダイアナ・ロス、アヴェレイジ・ホワイト・バンド、ビー・ジーズ、フィル・コリンズ、ホール&オーツ、、シャカ・カーン…その他大勢を手がけ、2000年代のノラ・ジョーンズにいたるまで、とにかくメイン・ストリームの中でもっとも良質なR&Bを提供し続けた人なのだと思う。

思うに80年代から今日に至るまで、およそR&Bというジャンルは、少しでも進歩というものがあったのだろうか?
私にはわからない(←進歩がないとは言っていない)
かといって、音楽は進歩しなくてはならない、と考えているわけではない。念のため。
posted by BustaCat at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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