2005年04月10日

Are You Experienced?

 旧Blogに掲載していたレビューに若干の加筆訂正を加えたものです。
 「作品」レビューというのには、ちょっとこだわりがあって、Jimi の生前にリリースされたアルバムだけを「作品」と呼ぶことにします。
 読み返すとなんだか「偉そう」な文章で、何様のつもりだ、と感じられる向きもあるかもしれませんが、Jimi のことを書いていると、ついついテンション上がってしまうのです。どうかご容赦のほど……

areyou1.jpg

01. Foxy Lady (3:19) CBS Recording Studios, London, Dec 13, 1966
02. Manic Depression (3:41) De Lane Lea Studios, London, Mar 29, 1967
03. Red House (3:42) CBS Recording Studios, London, Dec 13, 1966
04. Can You See Me (2:33) De Lane Lea Studios, London, Nov 1966
05. Love Or Confusion (3:11) De Lane Lea Studios, London, Nov 1966
06. I Don't Live Today (3:54) Olympic Sound Studios, London, Feb 1967
07. May This Be Love (3:10) Olympic Sound Studios, London, Apr 3, 1967
08. Fire (2:43) Olympic Sound Studios, London, Februay 3, 1967
09. Third Stone From The Sun (6:44) CBS Recording Studios, London, Dec 13, 1966
10. Remember (2:48) De Lane Lea Studios, London, Feb 1967
11. Are You Experienced? (4:13) Olympic Sound Studios, London, Apr 3, 1967
12. Hey Joe (3:29) De Lane Lea Studios, London, Oct 23, 1966
13. Stone Free (3:36) De Lane Lea Studios, London, Nov 2, 1966
14. Purple Haze (2:50) De Lane Lea Studios, London, Jan 11, 1967
15. 51st Anniversary (3:16) De Lane Lea Studios, London, Jan 11, 1967
16. The Wind Cries Mary (3:20) De Lane Lea Studios, London, Jan 11, 1967
17. Highway Chile (3:32) Olympic Sound Studios, London, Apr 3, 1967

 イギリスで 1967年の5月に発売された、いわずとしれた Jimi Hendrix のデビューアルバム。プロデュースは Chas Chandler。Jimi を発掘しUKでデビューさせた仕掛け人である彼のコンセプトは非常に明確だった。このサイケデリックでアグレッシブな衝撃的ロック・スターの魅力を、できるだけキャッチーでコンパクトにまとめようとしたのだ。この試みは大成功をおさめている。この新しいロック・スターはそれまでのUKのビートロック・スター達を一気に、凌駕するインパクトを持っていた。


 1967年といえば、Beatles が "Sgt. Peppers" をリリースした年であり、また、LSD が大流行して何かと話題になる年でもあった。そして Rock シーンは、新しい時代の胎動を感じて揺れはじめていた時期でもある。このアルバムは、UKアルバムチャートの2位まで上ったが、その時1位に君臨していたのは、他ならぬ Beatlesの "Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band" だった。「コンセプト・アルバム」というのが流行りだした頃でもある。"Sgt. Peppers" と共有した「時代」の匂いはこのアルバムのあちこちに散在している。

 全体にサウンドはひどく荒々しいのだが、最新の Eddie Kramer のリマスタリングでは、オリジナルのモノラルLPに比べればかなり聴きやすい音にまとめあげている。
 このリマスタリングについて、OLD ファンからは賛否両論あるようで、どちらかというと否定的な意見を聞くことが多い。
 確かにオリジナルのモノラルLPが持っていた恐ろく鋭利な衝撃、たとえて言うと「AMラジオから突然とんでもないものが流れてきて、それを聴いてしまった後、もう決して前には戻れない衝撃」…のようなものが、新マスタではオブラートに包んでしまったかのように薄められている、ということはできるかもしれない。
 しかし、私はリマスタリングの音でいいと思っている。たとえそれが現代風に薄められているとしても、このサウンドは、去勢さてしまった現代の ROCK ではまず聴くことのできない貴重な音であると思うし、それは「今」の ROCK に対して十二分な意味を持ち続けていると思う。

 Track-1から11はオリジナルUK盤と同じ内容、Track-12 以降は当時のシングル版のA/B面をボーナスTrack として収めたものになっている。

 アルバムの先頭を飾るのは、Foxy Lady だが、オリジナルUS盤他では、代わりに Purple Haze が先頭を飾っている。この先頭曲の違いは大きいと思う。
 Foxy Ladyは、今になって聴けばオーソドックスなハードロック・チューンで歌詞も極端にストレートであり、驚くような曲ではない。F# 7th #9thというコード(これをジミヘンコードと呼ぶ人がいるらしいが)の「破壊的」な響きは、今やRockの定番コードであり、このコードを主にした曲というのは数えきれない。ルーツはよくわからないが、「ジミヘン・コード」という呼び名が示すように、Jimi Hendrix によって広く Rock ファンに印象付けられた響きであることは確かだ。
 歌詞の方なのだが、大意を書いてしまうと「んん、お前ってイカしてる。俺の女になってくれぇ」というなんともしどけないものなのだが、実は、Jimi の曲でこのようにストレートに挑発的・扇情的な歌詞の曲というのは珍しい類だ。Jimi の歌詞はとても奥行きが深いか、驚くほどロマンチックか、あるいは全く意味不明かのいずれかであることが多い。Foxy Ladyの歌詞はその意味例外的である。Track-2のManic Depressionのように、躁うつ病に擬えた「ひねた」ラブ・ソングの方がずっとJimiらしい(この曲、撥ねた6/8拍子系のギターリフも「ひねて」いるが心地ちよい)。
 片や、Purple Haze の方なのだが、キャッチーなハードロック・チューンであることに変わりはないが、こちらはかなりサイケデリックが「きて」おり、Foxy Lady に比べるとこちらの方が Jimi の毒(アバンギャルドな Blues の毒)がよくまわっている。US盤でこの曲を先頭にもってきたのは、おそらく「サイケデリック」を前面に打ち出したかったのだろう。この曲は、キャッチーであるかもしれないが、決して「ストレート」ではない。相当に歪んだ上でどこかで切れており、曲全体の異様な響きが耳にこびりつくというタイプの曲だ。その意味ではFoxy Ladyとは(意外に)対極をなすかもしれない。意味不明系の歌詞はそのワケのわからなさがかえって意味明瞭に「ハイに決まった状態」を表現していると誰しも想像できる。

 このアルバムの中において、いろいろな意味で最も「重い」のは、Track-3のRed Houseではないだろうか。特にRed Houseの重さは、同時代のUKのミュージシャン、というよりギタリストをおそらく叩きのめしたのではないかと想像できる(実際たたきのめされたという証言が多数ある)。これは、オーソドックスでストレートなBluesナンバーなのだが、深く血に根ざした伝統と言う意味で同時代の白人Blues系ギタリストが到底真似できる代物ではない。同時に、本場の「本物」のBlues-Menにとっても、別の意味で真似できない代物でもある。「本物」のBlues-MenにとってのRed Houseは、Black Rock という全く新しいジャンルの音楽でありサウンドだからだ。3分足らずの最少構成のBluesナンバーではあるが、聴き終えると、頭に斧を食らった気分になる。
 もうひとつ、Jimi の素性を示すのに都合のよい曲として、Track-10に収められたRememberという佳曲がある。地味だがたいへん美しい曲で、この曲に関しては、ノン・ディストーションのギター・サウンドもたいへん美しい。この曲はRed Houseほどではないにせよ、同世代のUKミュージシャンには別の種類の軽い衝撃があったのではないかと私は想像している。ここでのJimiは、今度は伝統に根ざしたSoul-Manを演じているからだ。この曲を可能にしたのは、間違いなく下積み時代のUSソウル・シーンにおけるキャリアである。さりげない曲だがおいそれとは模倣できないような深さがある。Jimiというギタリストは、実はヴォーカル・バックの目立たない地味なプレイがとても巧く、それがとても美味いのだ。

 もう1曲、血と伝統において特筆すべき曲がある。Track-6のI Don't Live Todayである。Jimiはライブにおいてこの曲を「アメリカン・インディアンに捧げる」と口走ったことがあるそうだ。メッセージソングととれないこともないが、そのようなとり方はおそらく穿っている(Jimiはメッセージソングを歌うようなダサい奴ではないと私は信じてる)。サウンド自体はちょっと風変わりだがキャッチーなハードロック・チューンであることにおいては他の曲と変わりなく、後半部ではJimiファンにはライブでおなじみの「カオス」状態へと攻撃的に突入していく。憶測しかできないが、この曲は「チェロキー」の戦いの宣言?…かもしれない

 最後に、Track-9 Thrid Stone From The Sun のことを書かなくてはならない。
この曲をLPではじめて聴いたとき、恐ろしくて身震いがした。音が耳にこびりついていつまでも離れなかった。 脳に焼きついたイメージは決して消えない。故Jaco Pastorius がライブでこの曲をカバーしたのを偶然聴いた時には恐怖が全てぶり返した。カバーしているのがジャコ・パスというのも恐怖を倍加する。しかも彼の最晩年である。今改めて、最新リミックスを聴いてみて恐怖は全く同じ……。この曲については、こういう書き方しかできない。この曲を満たしているのは火星の淵をかすめて覗き見える冥界の音だ。因みに Thrid Stone とは地球のことである。一般にこの曲が取り上げられるとき、ドラッグ体験であるとかサイケデリックがどうしたといった文脈で語られることが多いのだが、この曲はそういうレベルの曲ではない、とだけ書いておこう。

 さて、このアルバムに収められた曲の多くは、その後のJimiのライブでは、定番として繰り返し演奏されており、それだけにRockシーンの中でのJimiの印象を代表するものになっていると思われる。Trackでいうと 1, 3, 6, 8, 13, 14, 15 あたりの曲だ。晩年のライブにおいては、ファンサービスのためだけに演っているととれないこともない。しかし、このアルバムはJimiのあくまで出発点なのであり、Jimiはここから先へ突き進むことになるのだが、この突き進んだ先のJimiの音楽というのは、あまり広くは知られていないように思う。つまり、衝撃的なデビューの余波が世界中にようやく到達した時点で、彼ははやくも逝ってしまうのだ。だから、世界へ浸透したのは、結局このアルバムにコンパクトに収められた「衝撃」だけに終わっているのが口惜しくてならない。

追記:

 Wind Cries Mary のことに触れるのを忘れていた。
 この曲はオリジナル盤には収められておらず、当初シングル盤としてリリースされたものだ。後の Little WingやAngel と並べて、私は勝手にフェリーテイル・シリーズと呼んでいる。
 シャイなロマンチックさ加減がたまらなく愛おしい。私にとっては、この愛おしさがなければ、Jimi Hendrixではない。件のトリビュートでは、Sting がこの曲をカバーしていた。「いかにも」という感じですね。ほんとに。

おもちゃがおもちゃ箱に帰り
道化役者がみんな床につくと
幸せが町の通りでよろつくのが聴こえる
足音は赤で着飾る

And the wind wispers Mary

昨日の人生の壊れた破片を
ほうきが侘しく掃いている
どこかで女王がすすり泣いている
どこかで王が妻を失う

And the wind it cries Mary

信号が明日で青に変わり
俺のベッドで空虚を照らす
かつての人生はもはや亡きものとして
小さな島は流れにそっと歪む

And the wind screams Mary

過去に口にした名前を
風は覚えているだろうか
風よこの杖と共に
自分の老いや叡智を覚えているだろうか
否これが最後だろうと風は囁く

And the wind cries Mary

- by Jimi Hedrix -


posted by BustaCat at 20:24| Comment(3) | TrackBack(0) | ジミ・ヘンドリクス REVIEW | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
Jimi Link に入れてもらっている、PAGE FULL OF JIMIのしもさかです。
レヴューを読んだら、ARE YOU EXPERIENCED?久々に聞きたくなりました。また新たな発見があるかも...
それでは、おやすみなさい。
Posted by しもさか at 2005年04月12日 02:28
しもさか さま >
はじめまして
コメントありがとうございます。

PAGE FULL OF JIMI いつも愛読させてもらってます。
今後もよろしくお願いします。
Posted by Musicology(BustaCat) at 2005年04月12日 03:04
レビュー全文も素晴しいですが
最後の”風の中のメリー”の対訳が
オフィシャルなものよりずっと
こなれていて素敵でした!
自分も訳してみたんですけど完敗です(笑)。
Posted by 魂小僧 at 2005年06月18日 06:02
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