2005年05月19日

ELECTRIC LADYLAND

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Electric Ladyland

The Jimi Hendrix Experience の3rd アルバム。1968年10月にリリース。日本では翌69年の3月にリリースされている。US チャートでは1位に、UK チャートでは最高7位になった。UK チャートが意外に低いのは、ヌード・ジャケット問題のせいか?
Jimi の代表作であつると共に最高傑作であると紹介されることが多い。最大の力作であることは間違いないし、重要なアルバムであることも間違いないのだが、このアルバムを最高傑作と呼ぶことに、私としてはほんの少し抵抗がある。
今更の「たら・れば」は虚しいのだが、もし Jimi が "First Rays Of New Rising Sun" を完成していれば、それが間違いなく最高傑作であったと思う。後、ほんの少しだけ時間があれば……。



ともかく、いい意味でも悪い意味でも、Jimi の大きな転機となるアルバムである。バンド Experience は、このアルバムを境に急速に解散へと転がり落ちていく(実際に最後のライブは69年の6月29日)。そして、これまでマネージャを務めた Chas Chandler が Jimi の元を去ってしまうことになる。理由はいろいろと言われているが、結局のところは、大きくなりすぎた Jimi が手に負えなくなった、ということのようだ。後から考えると、この Chas との離別は、Jimi にはひじょうに痛かったように思われる。最晩年の Jimi は、Chas との関係を元に戻したい(後任マネージャであるマイク・ジェフリーとの関係を解消したい)と語っていたらしい。

この時期の Jimi は、単なるロック・スターではなく、最早スーパー・スターと言えるような存在になってしまっていた。このアルバムは、Jimi にとって初のセルフ・プロデュース作であり、伸び伸びとやりたいことをやっている感がある。まるで、前作までの、ある意味「欲求不満」をはらすかのようだ。反面、第三者のプロデュースによる箍が外れてしまった分、このアルバムは統一感を失ってしまい、やや冗長で散漫な印象を感じざるを得ないところもある。
大抵のワガママが通るようになったスーパー・スターは、取り巻き(Electric Ladies)に囲まれて引き篭もり状態。その代わりというわけではないだろうが、外から大勢のミュージシャンを集め、スタジオをブロック・ブッキングで押さえてセッション三昧している。
集められたミュージシャンは、Dave Mason, Al Cooper, Jefferson Airplain の Mike Finnigan, Jack Casady など。

佳曲があいかわらず満載であることは言うまでもない。"All Along The Watchtower"、"Voodoo Child (Slight Return)"、"Crosstown Traffic"……。Jimi の曲づくりの才能はもう疑うべくもない。そして、曲作りはここへきてかなり洗練されてきている。さらに、前作との比較で際立つのはサウンド・クオリティだ。特にギター・サウンドは圧倒的によくなっている。ギター・サウンドだけでイってしまいそうな曲が何曲もある。

改めてリストを眺めてみると、全14曲のうち、Experience のトリオでやっている曲は実に4曲しかない。つまり、Noelがベースを弾いているのは4曲だけ。しかもそのうち1曲は Noel の曲だ(Little Miss Strange)。このことが実にこのアルバムを象徴している。

このアルバムは、音楽的にもサウンド的にも極めて優れているにもかかわらず、先にも述べたようにどこか「散漫」な感を受け、アルバム全体の基調となるカラーを見つ出すことが難しい。そこで曲を一つずつとりあげていくことにする。
track-3, 9, 15 のみがChasのプロデュースで後はJimi のセルフ・プロデュースとなっている。

01 ...And The Gods Made Love
68/06/29 Record Plant, NYC

いかにも思わせぶりな90秒の短いサウンド・コラージュ。これについてはJimi自身の言葉を借りた方が早い。
「天国を90秒の音で描いたようなものさ。この種のものは批判の的にされやすいのでわざと最初に入れた。」

02 Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
68/04 〜 69/06 Record Plant, NYC
Jimi(Gutar, Bass, Vocal), Mitch(Drums)

Jimi が珍しくファルセットで歌う美しいバラッド。バックコーラスもJimi。さりげない曲だが、Jimiの曲作りの成熟を実感させてくれる。今になってあらためて聴いてみると、実に Prince を感じる。本当は逆で Prince が Jimi を感じさせるのだが……

3 Crosstown Traffic
67/12/20-21, 68/04に追加録音 Olympic Sound Studios, London
Jimi(Guita, Piano, Vocal, Kazoo), Mitch(Drums, Chorus), Noel(Bass, Chorus), Dave Mason(Chorus)

前作の路線を引き継ぐともいえるキャッチーなナンバーであり、しかも驚くほど音楽的完成度が高い。巧みなコード進行、キャッチーなコーラス、キレイに纏まったサウンド等々、このまま「現在」に通じるものを持っている。「60年代」のロック・ナンバーの中で最も完成度の高い曲の一つかもしれない。オープニングのカズーが妙にキュートだ。

4 Voodoo Chile
68/05/01(02?) Record Plant, NYC
Jimi(Guitar, Vocal), Mitch(Drums), Jack Casady(Bass), Steve Winwood(Organ)

恐ろしく DEEP な Blues ナンバー。全くのスタジオ・ライブで熱いジャム・セッション(実際には、オーバー・ダブが行われているようだが、それは Voice 等の効果音だろう)。Mitch と Steve が熱いソロを聴かせる。この手のセッションでは Jimi が長いソロを一人で延々と演りそうなものだが、実際には、ソロを弾きまくるよりも、メンバーとのセッションを楽しむことに専念しているように聴こえる。
Jimi のジャム好きは有名だが、実際、ツアーやレコーディングの合間をぬって、あらゆる場所であらゆるミュージシャンとジャムを重ねている。そうしたジャムが Jimi の音楽に多くのインスピレーションを与えたことは間違いない。そして、このトラックは、そういうJimiのジャムの様子を再現しているようでもあり、貴重なトラックかもしれない。

5 Little Miss Strange
68/04/22 Record Plant, NYC
Jimi(Guitar), Noel(Guitar, Bass Accoustic Guitar, Vocal), Mitch(drums)

このアルバムではすっかり影が薄くなってしまったノエルの曲。残念ながらアルバム全体から激しく浮いている。サイケデリック・ポップはこの時点では最早凡庸だ。

6 Long Hot Summer Night
68/04/18 Record Plant, NYC
Jimi(Guitar, Bass, Vocal, Chorus), Mitch(Drums), Al Kooper(Piano)

ブルージーでアーシーな、どこかスワンプ・ロックを思わせるようなナンバー。Al Cooper のピアノが絶妙な「味」を出している。Jimi としてはこの類の曲はめずらしい。それでもギタープレイが見事にはまっているのは流石。ギタリストとしての懐の深さを垣間見せてくれる。

7 Come On (Let The Good Times Roll)
68/08/27 Record Plant, NYC
Jimi(Guitar, Vocal), Noel(Bass), Mitch(drums)

Earl Kingのカバー。唐突にバンド Experience トリオの音に戻る。実に Experience らしい音である。にもかかわらずこの曲は、アルバムの中では心なしか浮いた印象がある。ということは、このアルバムは最早 Experience のアルバムではないと言えるのではないだろうか。この曲はアルバムの中で最後に録音された曲だ。もしかしらたJimiはこの曲を録ることで、バンド Experience を繋ぎとめようとしたのかもしれない。そうだとしたら、少しだけ、切ない。
一発録りを14回くり返して、その最後のテイクらしい。

8 Gypsy Eyes
68/04 下旬から 68/05 上旬の間の録音、詳細不明
Jimi(Guitar, Bass, Vocal, Chorus), Mitch(Drums)

ジミの実母、ルシールさんのことを歌っている。ルシールさんは Jimi が16歳のときに亡くなっている。Jimiは、母親の愛に飢えた少年だったという。ある意味、このアルバムの中でもっとも Jimi らしい曲なのかもしれない。
(しかし、この曲のフェイズをいじくり回したミックスは少しやりすぎではないだろうか……)

9 Burning Of The Midnight Lamp
67/07/06 Mayfair Recordings Studio, NYC
Jimi(Guitar, Vocal, Electric Harpsichord, Mellotron), Noel(Bass), Mitch(drums)

この曲はとても美しい曲だが、実は前作 Axis:Bold As Love のリリース以前に録音され、シングルとしてUKでリリースされている。UKチャートでは最高16位だった。Jimi の曲の中でもひときわ異彩を放つ曲だ。とてもUKっぽい曲で、思い切りUSっぽいLong Hot Summer Nightと対照的。この辺りが散漫さを感じる原因かもしれない。
ところで Electric Harpsichord というのは、一体どういう楽器?クラビの変種?(誰か教えて下さい)

10 Rainy Day, Dream Away
68/06/10 Record Plant, NYC
Jimi(Guitar, Vocal, Bass?), Buddy Miles(Drums), Larry Faucette(Congas), Freddie Smith(Sax), Mike Finnigan(Organ)

ブルージーなシャッフルナンバー。ドラムはBuddy。
冒頭でFreddie SmithのサックスとJimiのギターが、競い合うようにブルージーなフレーズの応酬を聴かせてくれる。Buddyのシャッフルはスネアのタイミングが重く聴こえるが、実はこれは意外と「ツボ」だ。軽いナンバーだがとても心地よい。

11 1983... (A Merman I Should Turn To Be)
12 Moon, Turn The Tides ... Gently Gently Away
Jimi(Guitar, Bass, Drums, Vocal), Chris Wood(Floot)
68/04/23 Record Plant, NYC

この2曲はJimiとしては異色の曲だ。曲のセンスがまるで別人のよう。演奏はフルート意外全てJimiとなっている。ミキシングだけに18時間かけたという記録が残っている。世界はほとんどプログレ……。憶測だが、Jimi はここで Pink Floyd を強く意識しているのではないか。というのも、Jimi はインタビューで、 Pink Floyd に新しい可能性を感じる、として非常に高く評価しているからだ。そう考えて聴いてみると、ギターはどこか Dave Gilmore のニュアンスを感じさせないでもない。
ところで、この曲の Drums 本当に Jimi ??

13 Still Raining, Still Dreaming
Jimi(Guitar, Vocal, Bass?), Buddy Miles(Drums), Mike Finnigan(Organ)
track-10の続きだが、コンガが省かれてギターがオーバーダブされている。ほとんど同じ曲の続きであるにもかかわらず、ギターが大きくフューチャーされていることで全く違う曲に聴こえる。喋るようなWOW ギター・サウンドが左右を飛び交う。

14 House Burning Down
68/05/01 Record Plant, NYC (8月に最終ミックス?)
Jimi(Gutar, Bass, Vocal), Mitch(Drums)

Jimi 自身の言葉を借りると「燃えるようなギターサウンド」だそうだ。全編、燃えるようなギターだらけで展開する。ヘッドフォンで聴いていると、本当に耳に火がつきそう。ハードなチューンだが、初期の作品にみられる「ごり押し」ではなく、手の込んだつくりになってきているのがわかる。このテのハードでアグレッシブなナンバーにも洗練が伺えるのだ。

15 All Along The Watchtower
68/01/21 Olympic Sound Studios, London
Jimi(Guitar, Vocal), Mitch(Drums), Dave Mason(Bass, Accoustic Guita)

ボブ・ディランのナンバー。ディラン自身がこのカバーを聴いてとても驚いたという逸話が残っている。アルバムに先立ってUSでシングル・リリースされている。最高位は20位。
ももの上にのせたギターをライターでこすったというスライドギター風の音が、奇妙に美しくて印象に残る。WOW-WOWの使い方といい、この曲のギターはミステリアスでたまらなく美しい。Dave Masonのアコースティック・ギターも非常に効果的で、Jimiのギターを引き立てている。何故か近未来の退廃を思わせるようなところがある。一度聴いたら忘れられない曲だ。

16 Voodoo Child (Slight Return)
68/05/03 Record Plant, NYC
Jimi(Guitar, Vocal), Noel(Bass), Mitch(drums)

この後のライブにおける定番となる曲。Jimiのライブの代表曲といってもいいかもしれない。ライブにおいては数々の名演が遺されているが、ここでは、スタジオ録音であるにもかかわらずライブに匹敵するようなパワーを感じさせるのはさすがだ。

こうして聴きかえしてみると、69年にリリースされたこのアルバムが、70年代のロックをいかに先取りしていたかがよくわかる。
それでも、繰り返しになるが、この作品は決して到達点ではなく、通過点だったはずなのだ……

posted by BustaCat at 00:55| Comment(6) | TrackBack(2) | ジミ・ヘンドリクス REVIEW | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックサンクスです!!
かっこいいブログですねー。
ジミ相当お好きのようで、私のエントリー恥かしいばかりです。また、遊びにきますねー。
Posted by lenmac at 2005年05月21日 18:25
lenmac さん>
はじめまして。コメントありがとうございます。
lenmac さんの Blog へラック・バック打ちたい記事がまだまだたくさんあります。
純Blues系周辺……等など、これからもお邪魔させていただきます。
今後もよろしくお願いします。
Posted by BustaCat at 2005年05月21日 20:08
はじめまして。
当ブログにTB頂きましてありがとうございました。
こちらからもJIMIの記事をTBさせて頂きました。
まだ全部の記事を拝見しておりませんが、エントリーされた記事のタイトルだけでもかなりそそられる内容なので、じっくり拝見させて頂きます。
今後とも宜しくお願い致します。
Posted by LONEHAWK at 2005年05月22日 00:51
LONEHAWK さん
はじめまして。TB、コメントありがとうございます。
LONEHAWK さんのBlogもかなりそそられます。今後もお邪魔させていただきますのでよろしくお願いします。
Posted by BustaCat at 2005年05月22日 01:12
こんばんは。いつも楽しみに読んでいます。
ELECTRIC LADYLANDは一番売れたかも知れませんが、僕も最高傑作と言われるのにやや抵抗がありますね。
でも、無人島にどれか一枚Hendrixと言われたら、これかな。難しい...
Posted by しもさか at 2005年05月25日 02:17
しもさか さん。コメントありがとうございます。

>無人島にどれか一枚Hendrix…
「無人島」問題は難しいですねぇ(笑
私は、聞かれる度に違うのを選んじゃうと思います。
Posted by BustaCat at 2005年05月25日 22:29
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