2005年09月23日

ワイルド・スタイルな頃〜80年代サウンド一気総括

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メディアに"HIP-HOP"という言葉が流れ出したのはいつ頃のことか、はっきりとは覚えていない。この映画が公開された1983年には、間違いなく流通していたはずだ。

私はこれを新宿の映画館で観た。その時、最前列に陣取った黒人の兄ちゃん三人連れが、大はしゃぎしていたのを良く覚えている。奴らのおかげで映画を3倍楽しめた。ありがとね。
HIP-HOP を肌で感じてゾクゾクしたもんだ。

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Run D.M.C のデビューも83年。
当時、ラップなどというのは完全な邪道(笑
日本語ラップにいたっては完全なお笑いネタだった。
私にとっては、とにかくROCKなFUNKの逆襲が嬉しかった。

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Rising Hell

"Walk This Way"が大ヒットしたのは86年になってから。この曲だけは頑固なロック・ファンにも受けて、エアロ・スミスの原曲よりカッコいいじゃん……という具合にRun D.M.Cの名をロックファンの間に浸透させた。Joe Perry 本人も入ってたしね。
ふやけたAORの時代に、最も本気でROCKしてたのは、彼等かもしれない。
彼らはパンクより「切れて」いたし、何よりHIPだった。

流行は早い。しかし、
才能溢れる連中が新しい音を熟成させるには5年はかかる。
それが音楽シーンに深く根付くには10年かかる。
流行を忘れるには1年で十分だけれど。

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King Sunny Ade "Aura"
これは新しさに興奮を誘われたアルバムだ。
アフリカン・ビーツ、それも、FUNKの遠い祖先と言ってもいい"JUJU Music"と、最新のデジタル・ビーツとの出逢いだった。
これを仕掛けたのは、レゲエの『次』を狙っていたアイランド・レコード。要するにボブ・マーレイの次のカリスマ的な存在を狙ったワケ(そこまではいかなかったが)。
頼まれるとイヤと言えないスティービー・ワンダーもセッション参加(一曲のみ)。
ポリ・リズムというのは別段珍しいものではないが、ここで聴けるポリ・リズムは圧倒的に斬新だった。トーキング・ドラムの原始的な響きとCPUが刻む正確なビート。CPUが演じるVOODOO!!。このアルバムの後に出たダブ・ミックスなんて鳥肌ものだった。未来から聞こえる原始の音ですよ。
この人をきっかけに Ebenezer Obey とか Fela Kuti などを聴いていて、しまいにはナイジェリアへ移住を考えた(←これは嘘)。これらは皆、中村とうよう氏の影響。
因みにAdeの来日公演では、中村とうよう氏をお見かけした。声をかけようと思ったが怖いのでやめた(笑

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ハービー・ハンコックのFuture Shockも83年。"Rock It"がチャートを登った。
当時の印象は「なんかダサい……」だったが、
今になるとほとんど聴くに耐えない、悪いけど(笑。
スクラッチが流行してテクニクスの安いLPプレイヤーが異常に売れたりした。ブレーク・ビートの到来ね。
ハービーについて言えば、本物のJAZZと本物のFUNKを演れる人なのだから、あんまり腰の軽いことをやって欲しくなかったね。

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Scritti Politti が 最初の12インチシングルを出したのも、確か83年。
(ジャケット画像は85年にリリースされたLPのもの)
このYAMAHA製音源とサンプリングを駆使した音は、以降、多方面で徹底的にパクられることになる。
YAMAHAのDX-7/DX-1に搭載されたFM音源は、それまでのアナログ・シンセでは決して出すことのできない倍音たっぷりのアタッキーな音を作り出すことができた。だから、打ち込みでFUNKが可能になったのだ。これはでかい。
プロデュースはアリフ・マーディン。サブ・タイトルは「アレサ・フランクリンに捧ぐ」だった。
当時は極めて斬新なサウンドだったが、今聴くと実にオーソドックスに聴こえる上に、ビートが『アナログ』に聴こえるのが可笑しい。いずれにせよ、たいへん完成度の高い音であったことは間違いない。

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YESが再結成、トレヴァー・ホーンのプロデュースの元でヒットを飛ばしたのも83年。
"Lonely Hearts"がチャートイン。
古いプログレ・ファンはこれを聴いてかなり怒ったようだが、私は笑った。中森○菜の曲の間奏で、2小節そっくり"Lonely Hearts"を参照してくれたのも笑った。
オーケストラのサンプリング〜オーケストラ・ヒットが流行。この後数年、猫も杓子もオーケストラ・ヒットするようになる。サンプリング音を使えば時代の音、という安直な流行のはじまり。
因みに私は2Uサイズ・ラックマウントのサンプラーを持っていた。PCMによる『弦』のリアル・サウンドに驚いて、これはスゴイことができる、と思っていたが、後にプリンスが本当に凄いことをやってくれた……

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POLICEの"Synchronicity" これも83年。
こちらは時代の到来というよりは、時代の終焉を示すもの。ニューウェイブ・ロックを引っ張ってきたトリオの最終アルバムだ。次世代に引き継いだものは大きい。
Sting はこの後、一人で時代の音を演じ始めるが、これは意外と凡庸。Stingばかりが目立つが、POLICEというトリオは正三角形だったのだ。結構アヴァンギャルドでいいバンドでしたね。アンディ・ソマーズのスタイルは、意外にFUNK系のギタリストに影響を与えていたりする。

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Stevie Ray Vaughanがデビューしたのも83年。その前に、デビット・ボウイの"Let's Dance" でアルバート・キングばりのギターを唸らせて話題になっていた。この人の場合、時代と逆行するかのようにオーソドックス・スタイルを極めたのがかえって新鮮だった。そしてこれもまた時代の音だった。

84年になると時代の音はいよいよ本格化してくる。というより、ここらで完全に大衆化したと言ってよい。

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SADE!
時代の音というよりは、時代と無縁の不滅の音かもしれない。これはさすがに今でも十二分に聴ける大人の音だ。
新しくて古い大人の音。
大人の音というのは時代を問わない。大人はそれ以上成長しないからね(笑
デビュー・アルバムから大人の音を聴かせていた、というところがすごい。

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プリンス絡みでこの2枚。"I Feel For You"と"Glamorous Life"は、本当に流行ったね。そこら中でかかってて聞こえない日はなかった……
時代は完全にデジタル・ビートになった。今振り返って聴いてみると、安っぽくて聴くに耐えないものが多いが、この2枚はプリンスがらみだけに光っている。
特に"Glamorous Life"の非常に奇妙な音造りは、やはり流石なのだ。
アナログ・ビート〜要するに「人力発電」R&Bビートは、完全に古臭く聴こえるようになってしまった。特に重心が後寄りの(アフター・ビートっぽい)R&Bビートは、誰もやらなくなってしまった。

古いロック・ファンは、「最近の音楽はドラムとベースしか聞こえねぇ」と言って新しい音を嫌がっていた。私は、と言えば「ドラムとベースしか聞こえねぇ」音楽は、FUNKの逆襲と捉えていたので大歓迎していた。70年代末のダンス/ディスコブームでうんざりしてたからね。

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85年には、レッチリが登場(デビューはもっと前?)
Red Hot Chili Peppers "Freaky Styley"
このアルバムではプロデュースにジョージ・クリントン閣下を招聘。
P-Funk ならぬ、Punk-Funk の登場。
Jimi Hendrix がココにも還ってくる。

んでもって

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プリンスのAround The World In A Dayがあって……85年

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ピーター・ガブリエルの"SO"があって……86年

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マイルスの"Tutu"がある……86年
このアルバムは別の機会に別の形で紹介したい。

ここいらで、時代の音は、音楽的に熟成するのだった。

そして、これら一連の流れの最終進化形は、
プリンスの Lovesexy だと断言してしまおう。
プリンス自身も溜まっていたものをいったん全て吐いた、という感じだし……
本人も新しいものを造るという意識はなかったと思うし……

たくさんの「音」が消費されて忘れられる中、
世紀をまたいで残っているのは……
伝統を由緒正しく継承した「音楽」だけ。
なんだ、結局のところ振り出しに戻るだけじゃね〜か……

一つのスタイルが洗練されると、ブラック・メンから宣言が出る。
それは、元々俺たちの音楽だ。だから俺たちがもっとFUNK(y)にやるんだ。という「原点回帰」宣言。この宣言が出るたびに、さらに新しいHIPな音楽を生み出される。新しいHIPな音楽はホワイト・メンを交えて再び洗練されていく……それはnew-classicと呼ばれる。

そして、ブラック・ミュージックの歴史は原点回帰をくり返しながら、時代の、他の音楽を次々にその内へ取り込んでいくのだ。
posted by BustaCat at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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